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薬剤師によるがん患者さん向け情報サイト

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公開:2022年2月15日
更新:2024年8月

監修:埼玉医科大学国際医療センター薬剤部 部長
牧野好倫 先生

脱毛

がん薬物療法では、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬などの薬を使用することで、副作用があらわれることがあります。そのあらわれ方や時期は使用する薬によって異なりますし、患者さんの体調や体質によっても異なります。
重篤な副作用がでた場合、治療内容の変更や治療を断念せざるを得ないこともあります。
そのようなことを防ぐためにも、自分が治療に使用する薬で生じる副作用について知ること、そして疑問や不安があれば確認しておくことが大切です。
気になる副作用があらわれたら、ただちに医師や薬剤師などの医療スタッフに連絡してください。

がん薬物療法中では、細胞障害性抗がん薬、いくつかの分子標的薬などにより、がん細胞だけではなく毛根細胞にも影響が及ぶと、脱毛が生じます。
髪の毛だけではなく、眉毛やまつ毛、鼻毛などの体毛も抜けることがあります。髪の毛が抜け始めるときに、頭皮のかゆみなど違和感を覚える人もいます。多くは一時的なものですが、頭皮にトラブルが生じた場合、医師や薬剤師などの医療スタッフに相談してください。
抗がん薬による脱毛は、治療を開始してから2~4週間くらいの間にあらわれます。多くの場合、治療後3カ月ほどで数ミリ程度の長さに生えそろってきますが、新しく生えてくる髪の毛は治療前とは髪質や色に変化が起こることがあります。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の発現時期や期間には個人差があります。

在宅時のセルフケア

治療で使っている薬に脱毛の副作用がある場合、実際に抜け始める前にいくつかの準備をすることができます。髪を短く切っておくことで抜け毛がからまないなどの生活面でのメリットがありますが、患者さんによって考え方も感じ方も異なりますので、家族の方は本人の意思を尊重してあげてください。
ウイッグを使う場合も、好みや予算から自分の気持ちにしっくりくるものを選ぶようにしましょう。ただし、脱毛の程度によって、頭のサイズは変化するので調節できるもののほうがよいでしょう。
また、自宅にいるときは、ウイッグではなくバンダナやタオルなど刺激の少ない素材で作った帽子などを利用している人もいます。
眉毛が抜けてしまうと顔の印象が大きく変わります。その場合はアイブローを使って眉を描くようにするとよいでしょう。ただし、眉毛が抜けてしまうと眉山の位置などわかりにくいため、以前に撮った自分の写真を見ながら練習してみてください。
これまで眉毛を描いたことがない人も、最近はメイク法を紹介したウェブサイトなどもありますので参考にしてみてください。
鼻毛は抜けても外見上わかりませんが、抜けてしまうと鼻の中が乾燥しやすくなるため外出時にはマスクを使用するとよいでしょう。
治療中は頭皮が敏感になるため、刺激の少ないシャンプーを利用しながら優しく洗髪し、清潔に保ってください。
脱毛は直接生命にかかわる副作用ではありませんが、外見の変化から生じる心理的な負担は大きく、生活や行動に影響を及ぼすことがあります。気持ちが落ち込む、食欲がない、眠れないなど気になることがあったら、医師や薬剤師、看護師などの医療スタッフに相談しましょう。また、アピアランス支援の窓口やセンターを併設している医療機関が増えていますので利用されるとよいでしょう。