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薬剤師によるがん患者さん向け情報サイト

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公開:2022年2月15日
更新:2024年8月

監修:埼玉医科大学国際医療センター薬剤部 部長
牧野好倫 先生

便秘

がん薬物療法では、細胞障害性抗がん薬、分子標的薬などの薬を使用することで、副作用があらわれることがあります。そのあらわれ方や時期は使用する薬によって異なりますし、患者さんの体調や体質によっても異なります。
重篤な副作用がでた場合、治療内容の変更や治療を断念せざるを得ないこともあります。
そのようなことを防ぐためにも、自分が治療に使用する薬で生じる副作用について知ること、そして疑問や不安があれば確認しておくことが大切です。
気になる副作用があらわれたら、ただちに医師や薬剤師などの医療スタッフに連絡してください。

がん薬物療法では、細胞障害性抗がん薬、いくつかの分子標的薬、または嘔吐の予防のために使用される制吐薬などにより、腸の動きが抑制されるなどの影響を受けると、腸管内容物の通過が遅延滞留し、排便に困難を伴う症状(便秘)になることがあります。
さらに、治療中は薬剤の影響のほかにも体を動かす機会が減ったり、食事の量が減ったりすることが多く、それらが便秘の原因になることもあります。
食物繊維の多い食品を摂る、水分補給を心がけるなどの対策を講じたにもかかわらず排便がない、排便はあったが十分な量でない、軟便になるなど、気になることがあれば、医師や薬剤師に相談してください。便秘薬をうまく使用することがあります。どのような便がいつ出たのかを記録しておくと、医師や薬剤師に伝えるときに役立つでしょう。
抗がん薬の副作用によって起こる便秘は、投与後数日から1週間くらいの間で出現することが多いといわれています。ただし、あくまで目安であり実際の発現時期や期間には個人差があります。
便秘がひどくなると、排便がないだけでなく、激しい腹痛や吐き気・嘔吐をともなうなど、腸閉塞(イレウス)の危険が生じます。もし腸閉塞のような症状が現れた場合には速やかに医療機関に連絡してください。

在宅時のセルフケア

療養中は本格的なスポーツはできないかもしれませんが、散歩などをして少しずつ体を動かすようにしましょう。外出ができない場合はラジオ体操や簡単なストレッチ運動などを生活に取り入れてみるのもよいでしょう。ベッドにいる時間が長い人でもおなかをやさしくマッサージすることで、腸が刺激され排便を促す効果が期待できます。また、おなかを温めることも腸の動きをよくするといわれています。
また、水分摂取を意識的に心がけましょう。便秘には食物繊維を多く含んだものを食べることが勧められますが、体調によっては控えたほうがよい場合もあるので、医師や薬剤師など医療スタッフに相談してみましょう。さらに、食事に関しては高脂肪のものは控えたほうがよいでしょう。
排便の際には前かがみの姿勢がよいといわれています。イメージとしてはロダンの「考える人」のような前傾姿勢です。
排便を整えるのは、生活リズムを整えることでもあります。睡眠をとり、ストレスをためこまないように気をつけてください。