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薬剤師によるがん患者さん向け情報サイト

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公開:2022年2月15日
更新:2024年8月

監修:静岡県立静岡がんセンター 薬剤部 薬剤部長
篠 道弘 先生

抗がん薬に関わる
薬剤師の業務

抗がん薬に関わる薬剤師の業務を紹介します。

抗がん薬に関わる薬剤師の業務を紹介します。

薬剤師の業務

薬剤師の主な職場は病院と保険薬局です。薬剤師の仕事というと、患者さんにお薬を渡して、薬についての説明をしているというイメージをもっている人が多いかと思いますが、ほかにも注射薬を混ぜて配合したり、医薬品の情報を集め管理しておき、必要時にほかの医療スタッフと共有することで治療に役立てたり、入院中の患者さんの薬物治療や外来化学療法を受ける患者さんを全面的に支えたりと、薬に関するスペシャリストとしてさまざまな業務を行っています。
ここでは、薬剤師が日々どのような業務を行っているかについて紹介します。

調剤業務

調剤業務とは、医師の発行した処方せんに基づいて、正しい種類・正しい量の薬剤を取り揃えたり、調合したりする仕事をいいます。
処方せんを受け取ったら、患者さんの状態や体質、薬剤服用歴、時には検査値などを確認しながら、そこに書かれた薬の種類や量についてチェックします。その際、処方内容に疑問があれば、処方せんを発行した医師に問い合わせて確認を行います。
処方せんに問題がなければ、必要な薬を、薬剤の種類、形状、用法・用量などに注意しながら正確に揃えます。そして、最終的には、調剤を担当した薬剤師とは別の薬剤師が調剤内容をチェックすることで、ミスのない正確な調剤と患者さんへの薬の交付につなげます。
薬を渡す際は、処方された薬の正しい使用法や服用方法、副作用について患者さんに情報提供を行います。

調剤業務

服薬指導業務

服薬指導業務とは、患者さんが処方された薬を正しく服用・使用できるように、薬の用法・用量、期待される効果、懸念される副作用など薬の特徴を説明し、理解を促す仕事をいいます。
薬は決められた用法・用量を守って正しく服用・使用しなければ、十分な治療効果が得られないばかりか、むしろ害をもたらす等、不利益が大きくなるおそれもあります。服薬指導は、そのようなリスクを減らすために必要な仕事です。法律でも薬剤師の義務とされています。
服薬指導の際には、薬剤師が一方的に薬の説明をするのではなく、患者さんの症状や健康状態、不安に感じていることなども聞き取りながら行います。

服薬指導業務

注射調剤業務

注射調剤業務とは、注射薬を調剤する仕事をいいます。
医師の処方せんに従って、入院中の患者さんや外来で治療を受ける患者さんに投与する注射薬を用意します。その際、患者さんの体調や併用している薬などの服薬状況や使用状況を確認しながら、注射薬の種類、投与量、投与方法などを慎重に確認します。処方箋の内容に疑問がある場合には、処方した医師に問い合わせます。
調剤後の注射薬は、調剤した薬剤師とは別の薬剤師がチェックすることでミスを防止します。近年、注射調剤業務の効率化とリスクマネジメントの観点から、注射薬自動払出装置を導入する病院も増えています。

注射調剤業務

医薬品情報業務

医薬品情報業務とは、医薬品に関する情報を取り扱うことをいい、DI(Drug Information)業務とも呼ばれます。医薬品に関する情報を収集・管理し、医師や看護師へも提供します。
情報収集では、厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)などの公的機関や各製薬会社から発信される情報のほか、他施設の薬剤師などとも情報交換を通して幅広く収集します。院内で副作用等が疑われる症例が発生した場合にはその情報も集めます。
薬剤師は、集めた医薬品情報を専門的な知識をもとに評価します。必要な情報は保管し、適宜医師や看護師などの医療スタッフに発信し、共有します。院内メールや院内LANを活用する病院も増えています。

医薬品情報業務

病棟業務

薬剤師が行う病棟業務とは、入院している患者さんが安全で適正な薬物治療を受けられるように支援する仕事をいいます。
具体的には、入院時に患者さんやご家族と面談して、持参した薬、薬歴、副作用が生じた経験、薬に対するアレルギーなどを確認します。入院中に投与する薬については、医師の処方せんをもとに、薬の種類や量、飲み合わせなどに問題がないか確認します。がん化学療法の場合、患者さんの状態に合わせて適切な抗がん薬が必要な量でオーダーされているか確認します。以前にがん化学療法を受けたことのある患者さんの場合には、以前に使った抗がん薬の副作用から回復していることも検査値や面談等から確認します。手術の際には、休薬(薬の服用や使用を止めること)が必要な薬がないか確認します。手術後には、服用を再開しているか確認を行うとともに、患者さんやご家族に服薬指導を行います。退院時には安心して自宅療養を送れるよう改めて服薬指導を行います。
また、薬の効果や副作用などについても継続して観察を行い、入院中の薬物療法をサポートします。先進的な病院では、各種の専門薬剤師や認定薬剤師が薬の仮処方や、薬を安全に使用するために必要な検査の仮オーダーを行う形で、手術や外来診療で多忙な医師に提案し、医師がそれを承認する形で業務を行う場合もあります。

病棟業務

外来化学療法業務

外来化学療法業務とは、通院しながらがんなどの薬物治療をしている患者さんの治療計画書を審査したり、患者さんに治療について説明したり、相談対応などを行ったりする仕事をいいます。
治療計画書には、治療に用いる薬の種類や組み合わせ、投与量、投与速度、投与間隔、副作用情報とその対策などが書かれています。
近年、がんの薬物治療は、入院せず外来で行われることが増えてきました。薬剤師は患者さんの体調や悩みに寄り添いながら、安心、安全に治療を終えるまでサポートします。

外来化学療法業務

薬剤師外来

薬剤師外来とは、病院薬剤師がその病院に通院する患者さんと外来診療用の個室等で面談し、服薬指導や相談対応を行う仕事をいいます。
患者さんが安全かつ確実に薬物治療を継続していけるように、定期的な面談を通じてサポートしていきます。面談では、患者さんが使用する薬の用法・用量、副作用も含めた薬の特徴を説明し、自分の受けている治療内容を理解してもらいます。時には、薬剤師が副作用対策用の薬などを仮処方しておき、医師が診察して必要と認めれば、仮処方を追認する形で患者さんに薬が処方されることもあります。
薬物治療の中心が入院から外来へと移行している昨今、服薬アドヒアランス(患者さんが治療方針に納得し、決定に従って薬物療法を受けること)の向上のために薬剤師外来を開設する病院が増えています。

薬剤師外来